October 30, 2010

モノをつくる






昨日「よーいドン!」ってテレビ番組に出させていただき
いろいろ問い合わせの電話が入ってきた。
その中で多かったのが
施工をするのに化学物質が入っているかどうかの問い合わせ。
糊であったり
紙であったり・・・。



これから、紙漉き本番の冬を迎えます。
紙を漉くにはネリ料(トロロアオイの根っこをつぶして出てきた粘り)が必要となり
でも、そのネリ料も自然のものであるがために
ほおっておけば腐ってきます。
なので、今の紙漉きはこのネリ料を防腐剤につけて保管しているのが大半で
古来からの紙漉きを守っていると言われている黒谷和紙でも
やはり、防腐剤につけています。
当然、紙を漉いた時、微量ではあるのですが、残ります。

黒谷和紙の宣伝をと全国を回るうちに
和紙=すべて天然の素材
と言うのがお客さんの思いということを肌で感じ
私は、せめて冬の間だけでも防腐剤に漬けないトロロアオイで紙を漉くことを
3年前からはじめました。
方法は、トロロアオイの根っこが届いたら水で洗い、
それから、風とおしのよい日陰で干します。
実際に使ってみると、粘りは少々落ち、
使う量も増えるわけですが、
普通に紙が漉けます。(昔の人はこうやって紙をつくっていました。)
去年は黒谷でもっとも薄い文化財修復様の紙も漉いていました。
障子紙を漉いたり
壁紙を漉いたり・・・。
特に表記はしているわけでもないですが
こうやって漉いた紙はかおりが違います。
草の香りがします。

この流れは、黒谷和紙の中にも少しづつ広まってきていて
若い漉き師は興味深く見てくれているようです。
全国的に広まればとも思っています。
(ちなみに僕の知っている限りでは、
 高知のハレハレ本舗さん・http://www.hale-hale.com/
 美濃紙の長谷川和紙工房さん・http://www.minogami.com/index.htm
 が防腐剤を使わない紙を漉いています。
 この方々を見習ってはじめました。)



また、家を建てたり、改修したりすることに関しても
極力自然のもの(木と土と紙)でつくっていこうと
今、大工さんや左官屋さん、表具屋さん等と組み
いろんな取り組みを我が家を実験台に行っています。
日本家屋は木と土と紙からできていました。
それは、すべて土に還る素材であり
また、家族の成長や次の世代に家を受け継いでいく時に
改修しやすい素材です。
人は家に住むとき、長く安心を求めると思います。
デザイン的な部分は、その時代時代により変化していくもので
その都度、変更できるものが望ましいように感じます。
古くなったから、すべて覆うと言うのではなく
今あるもので、今まであったその土地の方法で
より美しく改修する、又はできるようにするのが望ましく思います。




実際、今我が家のアトリエとギャラリーの改修工事を行っています。
金銭的に豊かな家庭ではないので(笑)ゆっくりなのですが
少しづつ、確実に進んでいます。
お金がたまったら工事をするため利にかなっているし
職人さんと直で仕事をするため金銭的な相談もでき
かなり安く上っています。
去年の夏ごろから、大工さんに家の基礎と、屋根を再生してもらい
左官屋さんに水と土と藁スサだけでこねた壁を、荒壁の上に塗ってもらい(中塗り)
その上に和紙を貼っています。
現在行っているのは、ギャラリー部分(約5畳の狭い空間です)の壁と床なのですが
大きな絵を飾れるように柱の見える真壁の上に左官屋さんに大壁(大きな面)をつくっていただき
床にも土を塗ってもらい
その上から和紙を貼ろうと思っています。
和紙は光を含む素材なので、
北からの優しい光をうけ
全体的にやんわりと落ち着いた空間をつくろうとしています。
電気は通しません。灯りは自然の光と少し暗くなれば、ろうそくでとろうと思っています。




モノつくりとはなんだろうと時々考えます。
今あるものを作り続けたり
美しいとか、格好の良いものをつくることも必要と思いますが
人にその先へ向かってもらうお手伝いや提案をするのも私達の使命と思っています。

創造は、その次の次へ向い
そこには美しさであったり、安心感であったりが共有できる
スペースが想像力の中につくられなくては・・・・。

私達は、モノをつくるプロであり
つくるモノから生まれる世界を私達が示さなければ、誰もやれない。
そう思って、モノつくりに励んでいます。

(鉄の足に和紙の天板の什器)





*最終日行われるインド古典音楽のタブラー奏者・松本晃祐より

 紀元前の聖典ヴェーダを起源に、
 現在まで口承で伝えられてきたインド古典音楽。
 その時と場の即興性を重視し、
 永遠に進化し続ける古くて新しい音楽です。
 時空をも超える音楽が持つ力を、
 共有しあいたいと願っています。






*同時開催する「土にむかうひとびと」は近年綾部の中で感じる新しい流れを
 体感していただきたく思い企画しています。
 http://kitokamitofuruimonoten.blogspot.com/p/blog-page_1068.html







(ハタノワタル)




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