道中で仕入れたのは、あんこう、オニエビ、サザエの炊き込みご飯、水菜、さつま芋、人参などなど。どれも丹波の地産だ。
立ち寄ったお店で試食したにがり入の塩が美味しかった。
お昼!ちょうどお腹もすいていたし嬉しいなぁ!
と、考えているうちに、大益さんがせっせっせ…
ハタノ「大益さん?お手伝いしましょうか?」
毛利 「あ!そうです。大益さん!お手伝いしますっ!」
大益 「いやぁ、大丈夫ですよ。座っててください。」
ハタノ「…大益さん、フットワーク軽い!」
なすすべもなく、囲炉裏に薪をくべたり、火にあたったり。
そうして次々に具材が囲炉裏の鍋に入れられた。
鍋ができあがるのを待っている間に、少し時間だけお話をする。
大益「薪はね、回しながら燃やすと良いんですよ。そうすると、こうやって空気が入るから燃えやすい。」
毛利「おお〜!なるほど。この薪はどこから持ってこられるんですか?」
大益「そりゃ、裏の山とかから取ってきてますよ。」
毛利「それじゃあ、器などの作品に使っている木にはどんな種類があるんですか?」
大益「えぇと、橡、欅、桑、椿、槐、楡とか…桜も使ったりするなぁ。」
ハタノ「大益さんは木目大事にしはるんですよね?」
大益「そうそう。杉なんかは漆を塗ってもあんまり面白くないんだけど、同じ木でも木目が違うしなぁ。」
毛利「そうなんですね!その…、漆は全部自家栽培ですか?」
大益「いや、中国からも輸入してますよ。漆の原産は中国だからね。ちなみに漆は1回かいたら3日休ます。」
毛利「え、どうしてですか?」
大益「うん…、それは木を生かすためだなぁ。」と、和やかに答えてくださった。
大益「さ、そろそろ鍋も良いんじゃないかな?どんどん取ってってくださいよ。」
毛利「わーい!ありがとうございます〜!」
一同「いただきま〜す!」
毛利「くぅ〜〜〜!!めちゃくちゃ、おいしい〜〜〜!!!」
ハタノ「やっぱり囲炉裏、最高やね!毛利さんは仕事で来とるけど、なんか僕らは遊びに来ただけみたいな(笑)」
大岡「いやぁ、大益さんち、最高っす!」
(大岡は毛利の友人で、今回の取材には付添で同行してくれた。)
毛利「あの…、食事中ではあるんですけど、大益さんの作品制作に関してお伺いしたいです。」
大益「はい、何でもどうぞ。」
毛利「まず材料となる木材ですが、それはどのように仕入れてこられてますか?」
大益「だいたいは兵庫県の南丹市ってとこから仕入れてるけど、いろいろだなぁ。体積とか太さも肝心だけど、木目で素材を選んでます。」
毛利「木目…、ですね!」
と、モノノートだけに、しっかりノートにメモをする。
大益「ちなみに漆を塗るのには湿度75%、室内20℃が最適で、梅雨の時期が良いんだよなぁ。漆は10回かけて、その内の5回はサンドペーパー、その後は耐水ペーパーを使います。」
大岡「目の細かさは変えられるんですか?」
大益「ええっと、先に100-180-240-320を使って、後が320-400-600-800-1000だなぁ。やすりをかけた後、とりあえず直ぐに漆をかけないと動いちゃうんですよ。」
毛利「…動いてしまうって、何がですか??」
大益「うん、木って湿気とかで膨張しちゃったりするから、先にひとまず漆を塗って、仕上げは後回し!」
毛利「ふむふむ。」
これが漆を塗る作業スペース。温度計も常備。布が沢山掛けてあるのは「拭き漆」といって、漆を塗った後に布で拭き取る作業があるためだ。
毛利「ちなみにですが、大益さんの木工作家としての技術はどこで学ばれたんですか?」
大益「僕は弟子入りとかも特にないし、ほとんど独学ですよ。京都府民倶楽部の漆をかいてるおじさんのとこには3、4回行ったけど、そこもそれっきりだしなぁ。昔大工さんのアルバイトをしてたのがきっかけで、木が好きっていうのが直感で分かって、それからこの仕事を始めたのは覚えてるけど。小屋もその流れで建てちゃったしなぁ(笑)後ほど工房と小屋へご案内しますよ。」
毛利「ありがとうございます!」
大益「はい(笑)まぁ、しっかり鍋も食べてくださいよ。年始に近くに住んでる人と餅もついたからあるし、後ろにお雑煮もまだ残ってるから、良かったら食べてください。」
毛利「餅〜〜〜!!!」
大岡「うりちゃん、餅大好きやもんな(笑)」
毛利「(恥)、いや大益さんの貴重な食料ですので、少しだけ頂戴いたします…(笑)」
大益「はいはい、遠慮なく(笑)鍋をどけて、ここの網で焼いたらいいですよ。」
大益「これね、醤油をちょっと垂らして、この韓国海苔頂き物なんだけど巻いて食べたら、これが旨いんだよ!」
ハタノ「いや〜、それは最高やわぁ!!うちんちも餅はいつも焼くんです。」
そんなことも言いながら餅を口に頬張る。
こう何か、もちもちというよりもやわらかくて溶けるような食感で、美味しい!
オニエビの殻で取った出汁のアイディアも大益さんだったが、この焼きおにぎりも最高だった。
↓
大益「あの〜、ちょっと一服させてもらってもいいかなぁ?」と、申し訳なさそうに言う。
ハタノ「あぁもう、どうぞ。ん?あれ?大益さんってタバコ吸わはりましたっけ?」
大益「いや、実はこうやって人が来たときにだけ一本吸わせてもらうことにしてて、こないだも近所の人が来た時に吸ったんだけど、どうも禁断症状がでちゃってさ〜。まぁ欲しくっても買いに行けないんだけど。はっはっは(笑)」
と言って、キセルを取り出し、最後まで大切にタバコを吸う大益さん。
私はタバコを吸わないが、この満面の笑みを浮かべる大益さんを見ると、目の前に座っているのが、増々“山のおっちゃん”に見えて仕方なかった。
さて、囲炉裏を囲んでの団欒は話が尽きないが、
お腹がいっぱいになったところで、次に私たちは工房と小屋を案内してもらうことになった。
<Part4>へつづく
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