February 29, 2012

取材後記<Part4>

*初めての方はこちらからお読みください。
*モノノートMによる取材後記<Part1>はこちらから。

* * *

先に案内してもらったのは、小屋の方だった。

一階はギャラリーのようになっており、大益さんの作品がずらりと並んでいた。

会場で見るのとは、また一味違った。


「漆は乾燥と紫外線がテキだから、保存のために一階に置いてるんですよ。」と、大益さん。


台の上に器をのせて、写真撮影をするハタノさん。


毛利「上には何があるんですか?」

大益「あぁ、上は書籍になってます。良かったら上ってみてください。」


そう言われて上った先で見た光景は、

おとぎ話に出てくるような山小屋の主人の一室のようだった。


毛利「うわ〜!めちゃくちゃ沢山本ありますね!あ、漫画も置いてある!」

大益「うん、昔のだけど、漫画も読みますよ。」

毛利「眺めもいいですし、最高ですね。ちょっとここに座ってもらえませんか?」


そういって撮影させてもらった一枚がこれ。言わずもがな、とても趣がある。



ハタノさんとのツーショット!お二人ともいい笑顔。



毛利「そういえば、大益さんはいつから味土野で暮らすようになったんですか?」

大益「う〜ん…、えぇと多分、昭和38年くらいかなぁ。

確かここに来る前は、味土野が地図からなくなりそうだから助けてくれって友人に言われて来たんだけど、もうすでに『ふるさと 味土野の跡』なんて石碑が立っちゃっててさ(笑)

ちなみに、昔ここに住んでた人は、蚕を飼ったり、田畑を耕したり、ほとんど百姓をしてて、その頃は雪が6mも積もってたみたいだし、生活していくのに大変だったと思うなぁ。」


毛利「そうですね、ただでさえ大益さんの暮らしがすごいのに、今の私だったら到底生きていけない世界ですよ(笑)

大益さんは、ここでの暮らしをどう思っていらっしゃるんですか?」


大益「どうもなにも、もう慣れちゃったから特に何も思わない。ただ毎年の雪かきだけは、やらないと家が雪でペシャンコになっちゃうしなぁ(笑)まぁ、そんな感じです。」



手作りの小屋の窓から撮影した一枚。あたり一面、雪山がそびえ立つ。



雪山をバックに大益さんをパシャリ!絵になります。





さて、次に私たちは工房へと案内された。

そこも大益さんが建てられたわけだが、中の木材の多さに私は圧巻した!


毛利「木がたくさん…!!木くずも沢山ですね!これは畑の肥料か何かにされるんですか?」

大益「いや、これはひとまず風呂炊きに使って、その後灰肥料にするけど、基本的に肥やしは放置だなぁ。これは『粗ぐり』って言って、モーターの機械で大体の形を作ってから半年間乾燥させるものを言うんだけど、木くずはそのときに出たものです。


「粗ぐり」をもつ大益さん



大益「それに、ここは100Vしか電気がきてなくって、このモーターも自己流で改造しました。」

毛利「おぉー!改造!」

大益「その当時買うと5万円もして、そんなお金なかったもんだから、23万で売ってる山荘のを買ったわけ。でも後で気づいたんだけど、どうも改造した時に左手薬指を複雑骨折しちゃってたみたいで、指が今でもちょっと曲がってるんです。」

毛利!!!

大益「まぁ、いまは大丈夫だけどね(笑)」

毛利「(ほっ)…それを聞いて安心しました。」


作業中の大益さん。やはり目つきが変わる。



毛利「今使ってらっしゃる道具は何ですか?」

大益「これは、カンナっていって、これも自分で削りやすいように形を加工したんです。ハイスピード鋼9,4,3とか使ってます。」

毛利「道具もオリジナルなんですね!」


作業台の横に並ぶカンナ。たくさん種類がある。




毛利「大益さんが制作の上でこだわっている点や、気を遣う点などありますでしょうか?」

大益「まぁ、漆を塗るときは気を遣ったりするけど、それ以外の作業ってほとんど無心なんです。この機械の作業でどれだけ削れてるとかは、音で判断する。」

毛利「無心…、それって楽しんで制作されているっていうことですよね?」

大益「そうですね、やっぱりそうじゃないと続かないし、楽しんでます。」


毛利「ちなみに作り始めから完成までは、どのくらいの期間がかかりますか?」

大益「期間っていってもなぁー…、うーん…。」

ハタノ「大益さん、僕らはだいたい分かってるけど、知らない人も中にはいて、それを知ると作品に深みがでると思うんです。」

大益「うーん…、1年くらいかなぁ。これは手間仕事だし、根気が必要だから、もっとかかる場合もあります。」

毛利1年、長いですね。そうやって丹念を込められて出来上がった器などの作品は、どのように取り扱いすれば良いですか?」

大益「漆だから、水や熱に強いし、油もはじくから洗剤もあんまり必要ないです。ただ乾燥機にかけたら、すぐ痛んじゃいます。」



毛利「了解いたしました!…取材は以上です。(聞き漏らしたことないかな??)

また分からないことがあったらお電話させていただきます!今日はどうもありがとうございました!」

ハタノ「今度大益さんちに泊まらせてもらったら、また見え方違ってくると思うわぁ。」

大岡「うわぁ!大益さんち泊まりた〜い!」

毛利「いいね!夜とか星きれそうやもんなぁ〜!わさびも生えてるところ見てみたい!」

大益「はいはい、またいつでも来てくださいね。」


最後に記念の一枚。左から大岡、大益さん、毛利。(ハタノさん撮影)




ちょうどこの時、17:00を知らせるチャイムが味土野に鳴り響いていた。

だんだん日も長くなってきたなぁと思いながら、私たちは大益家を後にした。


Part5へつづく

* * *


*大益牧雄さん作品制作行程のまとめ*

①自家製モーター機械とカンナで「粗グリ」まで削る

②乾燥(半年〜1年)

③ヤスリをかける(サンドペーパー使用)

④漆をかける/ヤスリをかける(5回繰り返す/耐水ペーパー使用)…1

⑤漆を塗り重ねる(5回繰り返す)…2

※1,2に20日ほどかかる


次回は味土野から綾部へと所変わり、和紙職人ハタノワタルさんの暮らしの紹介です!

ご存知の方も多いのではないかと思いますが、和紙のモデルハウスに住まれています。

常に活動を続けられているハタノさんの取材後記もお楽しみに〜!

(モノノートM


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