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*モノノートMによる取材後記<Part1>はこちらから。
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今日は朝から雲行きがあやしかったせいか、
しびしびと小雨が降り出した。
そんな天気ももろともせずモノノートMの取材は続いていた。
毛利「窯焚きは年に何回くらいされるんですか?」
清水「だいたい半年に1回ほどだから、2回ですね。」
毛利「一度にどれくらいの量を焼かれるんですか?」
清水「それはもう、大小あわせて1,000点くらいは入りますね。」
毛利「おお!そんな沢山の量を、すごい。」
清水さんのこだわりは、古き良き焼き方に由来する。
「焼き締め」といい、土の持つ表情を生かすためにうわ薬をかけない技術のことだ。需要がなかった時期もあったそうだが、古来のものを、美術工芸を大切によう!というムーブメントが起きたことが、清水さんにも影響を与えたそうだ。
行程は、まずどんな形のものを作ろうかというイメージを頭で膨らませる。清水さんの場合、図面を起こすこともなく、土の準備をし、轆轤で形をつくり、うわ薬をかけ、窯に入れる。
この一連の流れには相当な月日がかかるのだが、驚いたのが、清水さんは素焼きをしないのだという。それには温度の関係があるそうで、いきなり本焼きをすることで、土の有機的なものが焼き飛び、やわらかい表情がでるのだとか。
「素焼きをしないと、一回分の燃料も浮きますからね。」
清水さんの器が少し重たかったり、厚めだったりするのは、このうわ薬の「生がけ」に耐えられる厚みにされているからなのだ。
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★本焼き:1,200℃〜
★素焼き:800〜900℃
└────────────────┘
それを『土なり』っていって、この形でしかできないものがあるんです。」と、清水さん。
こちらは所変わり、薪窯の前。
屋根の真ん中当たりにレンガが積んであるのがお分かりだろうか?
清水「窯の中の水分は重要で、それが器にふくらみを持たせます。
ちなみに墨色の器は、窯の中で不完全燃焼を起こしてるんです。
カーボン(炭素)が浸透すると丈夫になるので。」
清水「窯だしのときはここ一体が焼き物で埋め尽くされるんです。今はそこに少し置いているだけですが。」
毛利「いいですね!私、一回清水さんが窯だしをしてはる時に、『あー!今窯だしの時期なんや〜!』って、前の道通ってみたいです!(笑)」
清水「そうですか(笑)どうぞ。」
それが今のこれである。
さて、そろそろ日も暮れ始めたので、御暇しようと荷支度をし始めた。
清水さんには再び大河原駅まで送ってもらうのだが、なんせ電車が1時間に1本しかないため、のばらさんが時刻表を調べてくださった。
のばら「ちょうど16:47発の電車がありますね。」
清水「今からだったら十分ですね。それじゃあ、行きましょうか。」
毛利「はい、お願いします。今日はお世話になりありがとうございました!」そう言って、車に乗り込んだ。
今日はたった4時間ほどだったが、とても濃い一日を過ごさせてもらった。それもそのはず!陶芸に関して知識を持たなかった私が、目から鱗の連続で、未知の世界を垣間見たのだから。
しかし、今日初めてまともに清水さんと話したにも関わらず、車の中での話はいつのまにか私の人生相談になっていた。
「強い意志があればできないことはないし、頑張っている姿を見れば周りの人もきっと応援してくれますよ。」
このようなことを言ってくださったように思う。本当にありがたい。
「それじゃあ、また展覧会場でお会いしましょう〜!」と言って別れかけた。この時、時刻は16:47だった。
清水「…あれ??」
毛利「電車……」
清水「あれ!なんでや、時刻表が変わってる!44分発か…。」
毛利「すいません、最後話が盛り上がって出るのが遅くなったばっかりに……。待ちます。」
清水「ちょっと待ってくださいね。」と、電話をされた。
しばらくして、
清水「木津駅までお送りします。乗ってください。」
毛利「ありがとうございます。いや、でも加茂駅までで大丈夫です!」
清水「加茂も木津も大して変わらないんで、どうぞ。」
そうして私は再び車に乗せてもらうことになり、話は色々と盛り上がった。
また展覧会でお会いできるのが楽しみだ。
そんなことを考えながら、私は電車に乗った。
<Part12>へつづく
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