大益さんに出会ったのは
丹後で原発に反対するアート&クラフト展・久美浜アート&クラフトに出展した12年ほど前。
それから、何年か同じ会場で展覧会をした。
いつも、煤の香りがする人。
大益さんの作る作品は素朴で力強い
いつも、そんな印象を持っていた。
「なんで、こんなに素朴なんやろ~?」
こんな質問を丹後の作家さんにしてみた。
(丹後の作家さんは尊敬する人が多い。影響をかなり受けています)
「家に行ってみたらわかる」
今回の木と紙と土展では、よりメッセージ性の高い人を探していました。
展覧会の目的が、クラフトを見せる場という以上に
大量生産、大量消費の時代にきちんとものを言うという目的があり
丹後で行われていた久美浜アート&クラフト展で見せつけられた
意思表示の重要性を感じた事。
作り手として、作品でメッセージを伝える事の難しさ。
と、それを達成した時のもの作りの楽しさ
そんなことを踏まえて
よりシンプルにメッセージを伝える事のできる
ずっと心の片隅に残っている大益牧雄さんに声をかけました。
打ち合わせをするために大益家へ泊りに行った。
大益さんの家は、人里はなれた丹後半島の真ん中の味土野という場所にあり
近くの集落から、車で15分ほどかけて山道を走らなければ辿り着かない。
集落には3軒の家があるけど、冬の間は大益さんを残して後の2軒は里に降りる。
豪雪地(今年は3mの積雪だったらしい)で、冬の間は除雪も入らないので
ほとんど、里には下りれず
ひとりで暮らしている。
車を停め、家に上がる道沿いには小さな畑やお花畑があり
わさびまでが自生している
自分の作品用に植えて実際漆を採取している木が何本もある。
家の中には水道はなく、沢からの水が家の中に流れ込んでいる
ガスも無く、すべての調理は囲炉裏で行う。
家の中は煤けて、深い深い黒の世界に包まれ
その真ん中に囲炉裏の火が燃えている。
真っ黒に煤けた鍋に豚汁を用意してくれ
煤けたやかんで焼酎のためのお湯を沸かしてくれた。
囲炉裏の縁には何のこだわりも無いように置かれた大益さんの器
でも、そこには囲炉裏と空間の真ん中でしっかり呼吸する“素”があり
その器で、その空間で料理やお酒を頂いていると
妙な安心感に包まれる。
器とは特別のものではなく
ただ、空間と呼吸するものではなくてはいけない。
そう、言われているようだ。
夜な夜な、話は膨らんでは闇に消えていく。
大益さんはお酒が好きで、飲みすぎて何度もひっくり返ってた。
次の日の朝、工房や味土野を案内してもらった。
風景の中に立つ大益さんを見ていると
その風景の中の木のような存在のようだと思った。
何を語るのでもなく
何かを訴えるのではなく
ただ、そこにいて時の流れを受け止めているような存在。
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